今日の春秋は、江戸の昔から行われていた浅草寺周辺の商人たちの企画力について書かれていた。墨田川の水を使ったお酒のメッセージ性や現在の歯ブラシにあたる「ふさようじ」店の看板娘(アイドル)戦法、夏のほおずき市や師走の羽子板市など多彩なイベントといった商人たちが物を売り、町を潤した例が挙げられている。よく考えれば当たり前のことなのだが、店や企業が商品開発やマーケティングにさらに知恵を絞るということは昔からあったことに新鮮味を覚えた。

そんな江戸時代の浅草寺における情景を思い浮かべながら、4月から始まる消費増税を前にした現在の小売店の様子やマーケティング方法について考えてみた。増税前の需要をかきいれようとしていることが顕著なのが、スーパーマーケットなどの小売店ではないだろうか。店頭ではティッシュやトイレットペーパー、おむつやお酒などまとめ買いを謳い、商品がうずたかく積まれている 。販促物には、「増税」やら「8%」、「急げ!」など消費者をあおるメッセージが書き込まれている。これらも消費増税を利用した「イベント」の一種かもしれないが、自分たちで独自のイベントを企画し集客していた江戸時代の商人よりは少々考えるレベルが劣るように感じられた。個人的には需要が3月よりは確実に落ち込むであろう4月に、どのようにして消費者の購買意欲を高めようと企業がしているのかが表れた来月の店頭の様子も楽しみである。

また、消費者としても賢い買い物ができるようにならなければと小売店の様子を見ていて思った。現在は焦燥感に訴えた方法で消費者の消費を促し、あたかも今こそ商品が安くて買いであるように見えるかもしれない。しかしながら、消費税5%時のまとめ買いと消費税8%になった後のセールではどちらが実は安くなるのだろうかとも考えた。仮に後者の方が安く物を買えるのであれば、何も今焦って商品を買い占めなくても良いではないか。企業の宣伝文句に踊らされず、しっかりと状況を考えられる消費者にならなければならない。